一般家庭の保護者と児童養護施設の職員を対象とした意識調査結果を発表
2024年9月20日
子どもを育てる親と、児童養護施設の職員を対象とした子どものコミュニケーションに関する実態調査を実施し、「孤児院の日」である9月22日を前に、結果を発表しました。
代表の村上好は、「今回、児童養護施設の子どもと一般の子どもとのコミュニケーションについて、対比したアンケートの結果から、児童養護施設の子どもたちが抱える課題が明らかになりました。現在、児童養護施設の子どもたちの コミュニケーション力を育成する仕組みは十分とは言えません。虐待などが理由で社会的に養育されている全国の45,000人の社会的養護下の子どもたちが、学校や社会に出た時に、SOSを発することができ、対人関係をうまく結べるようになるための支援の重要性が高まっています」 と述べています。
「子どものコミュニケーション力に課題があるか」という質問について、一般家庭の保護者の約51%に対し、児童養護施設の職員では約92%が課題があると感じています。また、家庭の場合は、とてもある/ある/どちらかといえばある、と回答した割合がすべての年代で50%を下回っているのに対し、児童養護施設職員の回答では、どの年代でも高く、年齢に関係なく課題がある傾向があることが分かりました。
伝える力:「本人に言いたいことがあるのに、自分の意見が伝えられない。言語化できない」「本人にとって大切な場面で、自分の意見が出ない」について、一般家庭の子どもとくらべ、児童養護施設の子どもが当てはまる割合は2~3倍となりました。また、一般家庭では中高生の思春期にピークが見られる一方、児童養護施設の子どもでは、年齢を問わず高い割合で課題が継続していることが分かりました。
聞く力:「人の話を最後まで聞けない。さえぎったり、途中から他に気がいってしまう様子が見られる」について、 一般家庭の子どもの約40%に対して、児童養護施設の子どもでは約83%と大きな差が出ました。児童養護施設の子どもでは、どの年代も当てはまる割合が高い状況が続いています。
理解する力:「聞く能力に若干問題があり、具体例を出して丁寧に説明しないと話が理解できない」について、一般家庭(約25%)に比較して児童養護施設の子供の課題が大きい(約81%)ことが分かりました。 児童養護施設の子どもでは、すべての年代で当てはまる割合が高い結果となりました。
一般家庭の子ども(約28%)に対して、児童養護施設の子どもでは、約82%に課題が見られました。児童養護施設の子どもでは、多くの子どもがあてはまる/あてはまる傾向が、就学前から中高生まで年齢を問わず高い割合で見られました。自由記述で出た具体的な言葉として、児童養護施設の子どもでは、「殺す、ぶっ殺す」「死ね、死ねる」の 記載が85回見られました。
児童養護施設の職員への「コミュニケーション力の不足が、退所後の自立に影響を与えていると思いますか」という問いに、約90%が「思う」「そう思う」と回答しました。「誤解を招く」「孤立」「困難を抱える」「生活に支障をきたす」ことを 懸念する記述から、コミュニケーション力の改善が必要と考えられます。
特定非営利活動法人JAMネットワークの前代表で、「ことばキャンプ®」を通じて児童養護施設の子どもたちの自立支援を展開してきた髙取しづかは、この結果について、次のように述べています。「社会的養護下の子どもの約6割は虐待等により入所しています。彼らの言葉が乱暴であったとしても、その成育歴の中で気持ちを伝える言葉かけをしてもらった経験が乏しいため、良好なコミュニケーションが結べないからなのです。自分ではどうしようもない背景による苦しみがあることを、忘れてはならないと思います。 だからこそ、入所中からコミュニケーションの継続的なトレーニングが必要であり、子どもを支える職員への研修を併せて実施することで、退所後の自立のサポートが求められています。」
◆調査概要
一般家庭の子どものコミュニケーション力に関する実態調査 調査対象:3歳から18歳までの子供を育てる保護者 有効回答:115名 調査主体:特定非営利活動法人JAMネットワーク 調査期間:2024年5月30日~6月14日(Web調査) |
児童養護施設の子どものコミュニケーション力に関する実態調査 調査対象:全国の児童養護施設の職員 有効回答:216名 調査主体:特定非営利活動法人JAMネットワーク 調査期間:2024年6月4日~6月17日(Web調査) |
※なお、本調査の実施にあたっては、笑顔咲く未来創造隊(グロービス経営大学院公認クラブ「グロービス・ソーシャルアクションクラブ」プロボノチーム) 小林 由華、辻内 孝昌、安田 護、脇山 春香によるご協力をいただきました。